地上アナログ終了でFM放送局が増える?

日本はアメリや中国と比べると大都市で受信できるFM放送局が非常に少ない。
たとえば東京都内であれば、屋内でふつうのアンテナだとNHK放送大学を含めても5〜6局程度しか受信できず、放送内容も放送大学を除いてどの局もいわゆる「総合放送」だ。大阪も似たような状況で、さらに地方都市に行くと「NHK+民放1局」が標準になっている。
海の向こうのアメリカでは、たとえばニューヨークなどでは非常に局が多いらしいし、実際に行った中国の場合、少なくとも大連・北京・上海は、いずれも東京よりもずっとたくさんの局が受信できた。日本国内用のラジオだったので8688MHz〜90MHzの部分しか受信できなかったのに、42MHzの範囲だけですでに東京よりずっと多くの数の局が受信できるのだ。内容的には、中国語でニュースばかりやっている局とか英語放送専門の局とかずっとトークなしでクラッシックばかり流す局....など、専門局が多いという印象だった。これは多局化ならではだろう。
ところで日本のFM放送の周波数は76〜90MHzの14MHz幅となっている。(ちなみに日本以外の多くの国は8688〜108MHzの2220MHz幅)この範囲すべてをFM放送に割り当てられるかというと、どうやらそうではないらしい。
たとえば、関東地方では、エフエム放送の周波数表によると、80MHz前後から82.7MHzまでの割り当て率が非常に低いのがわかる。理由は定かではないけど私の想像では、この範囲には出力5KW〜10KWの民放本局等が多いので、混信を避けるためにこうなっているのではないかと思う。次に85MHzより上は極端に割り当てが少なくなり、87.4MHzから上は全く割り当たっていない。なんともったいないという気がするけど、これは関東地方ではアナログテレビ放送1chが使われており、ガードバンドを確保するためにこのようにしていると聞いたことがある。確かにテレビの1chが使用されていない関西地方では、89.9MHzまでちゃんとFM放送局に割当たっている。
ということは、いつか(私は2011年とは言わない)アナログテレビ放送が終了すると、90MHzまでフルにFM放送に利用できる可能性が出てくる。そうすると、少なくとも関東地方では開局ラッシュになるかもしれない。コミュニティー放送局や民放の開局ニーズが現在でも高そうなので十分可能性はある。
でも大阪をはじめとするガードバンドと無関係の地域は恩恵を受けないのか? というと、どうもそうでもないらしいのだ。というのは、アナログテレビ放送が終了した後に空きとなる90MHz〜108MHzにFM放送を割り当てようという動きがある。

■ 電波割り当ての検討状況

 デジタルラジオの実用化試験放送は、東京では現在VHF帯7chを使って行なわれているが、2011年のアナログテレビ放送停波後、ほかのVHF帯域も利用することを検討している。しかし、デジタルラジオがVHF帯域のどの程度を利用できるかは決定しておらず、総務省の 情報通信審議会 情報通信技術分科会の一部答申として、6月27日に明らかになる見通し。
...略...
話し合いの結果、1〜3ch(VHF LOW 18MHz/90〜108MHz)と、4〜12ch(VHF HIGH)の内、17MHzを放送が使用(合計35MHz)。残りのVHF HIGHの35MHzを自営通信が利用することになった。

ここで90〜108MHzに割り当てられる「放送」が気になるのだが、関連しそうな情報を見つけた。

VHF/UHF帯電波有効利用作業班 放送システムグループ ヒアリング資料(pdf)

注目したいのは、この中の15ページ目以降「超短波放送(FM)周波数帯域の拡大」という部分。FM放送局側から出された提案のようだが、これによると、現在のアナログFM放送と互換性のあるIBOC方式を採用し、1つの帯域(400KHz)にデジタル放送3チャンネルを重畳した形でアナログ放送を行うというものだ。将来アナログ放送部分を廃止し、デジタルに振り向けることによって3チャンネルのデジタル放送が最大8チャンネルまで増やせるそうだが、従来の受信機でも引き続き使えるというのがミソだろう。それにIBOCはアメリカでも採用している方式で、デジタル対応でも安価な受信機が供給される可能性が高い。
IBOCでは一波あたりの帯域が広がってしまうけど、割り当て周波数を整理することよって旧ガードバンドを有効利用すれば、76MHz〜90MHzしか受信できないラジオでも受信できる局数が減るという事態は避けれるだろうし、現在も販売されている「テレビ音声1ch〜3chが受信できるラジオ」では、そのまま周波数帯域拡大の恩恵を受けることが出来る。

と、ここまで書いてふと考えたのだけど、個人的にはRadio SHARK2を導入したりして時々ラジオを受信しているけど、音楽を聞きたいときはiTunesネットラジオを聴く事が圧倒的に多い。家でラジオを聴きたいときはネット経由という人が実はものすごく多いのではないだろうか? 日本のFM放送も多局化多チャンネル化を進めようとしようとしているが、「時既に遅し」となりつつあるのかも。