"長押し"からの解放

昔から「なぜ携帯電話にはダブルクリックインタフェースが存在しないのだろう」と思っている。パソコンではあたりまえのこのインタフェースが携帯電話で採用されないのはなぜだろう?
高齢の方をはじめ、ダブルクリックが難しい方が多い。だからパソコンでは「シングルクリックでも開ける」ようになっているわけで、私ももし長生きすれば、ダブルクリックが難しくなり、このような機能を利用するかもしれない。ゆえに携帯電話の世界では「長押し」が昔から存在しているのだろうが、ダブルクリックに慣れた人にとって「長押し」は苦痛では?と思う。最近の例であげると、Panasonicのドコモ向け携帯電話(FOMA)の仮名漢字変換操作があげられる。P902i以前のFOMA機では、仮名漢字変換のたびにボタンを長押ししないと予測変換できなかった。私の知人がP901iユーザーだったが、この点は非常に不評だった。(P902iでは仮名漢字変換エンジンが変更となり、変換中の長押し操作は不必要になったそうだ)
なぜ「長押し」が不評なのかを考えてみた。
ダブルクリックのための操作(ボタンを押す)をはじめてから操作が完了する(ダブルクリックによる機器の作用が始まる)までの時間に外部的な要因による制限は存在しない。つまり、操作完了までの時間は、ダブルクリックする速度と純粋な機器のレスポンスにのみ依存する。
一方、長押しではボタンを押し始めてから機器の作用が始まるまでにインタフェース提供者が定めた時間(1秒〜2秒程度が多い?)じっとボタンを押したまま待つ必要がある。わずかな時間ではあるが、この間を無為に過ごすことを強制されてしまうというのが不快感につながっているのではないだろうか。一つのボタンに(機器の状態に依らない)複数の機能を割り当てようとすると、どうしても工夫が必要となる。長押し・ダブルクリックのほかに考えつくのは、シフトキー的な操作(専用キーが必要となり、片手での操作も難しそう)・音声入力などとの併用....などだが、どれも決定打にはならない。
私は、現在の携帯電話で「長押し」となっている部分は、すべて「長押し または ダブルクリック」に置き換えてしまって良いのではと思っている。そして、それぞれの存在が不都合な人はどちらかをdisableできるようにするのいうのはどうだろうか。デフォルトが「ダブルクリック無効」で、設定によって「有効」にできる...でも良いと思う。
「利用頻度の低い機能を割り当てるのであれば長押しでも良いのではないか」との声も聞こえてきそうだが、これは本当にそうだろうか? たとえば、電源キーが恐らくこのような判断で長押しとなっている機種が多いのだろうが、電車のシルバーシート近辺や公共の場所など、本来携帯電話の電源を切る必要のある場所は多いはずである。電源を切るべき場所から離れるとまたすぐに電源を入れる必要があるが、長押しだとおっくうなのでどちらもやらない...という人は実は多かったりするのではないか。
携帯電話各社には是非検討してもらいたい。